File.01 [ 1番人気が消える時……] 勝利の方程式

1番人気が崩れる時は?
圧倒的1番人気でなくとも、人気馬が連から外れると思わぬ高配当を呼ぶ事があります。でも必ずしも1番人気が崩れるわけじゃないし、その見極めはどうすればいいのでしょう?

 
 
なぎさ: これは誰もが悩む事よね。あたしもいつも悩んでるんだけど…。
けんすけ: 人気馬が連に絡みそうか=堅く収まりそうかを見極めるのは競馬予想の第一歩と言えるぜ。
赤ペンおやじ: わしなんか、人気馬なんぞとっとと負けちまえと思ってるぞい!
けんすけ: だから馬券があたらねぇのか。
馬成教授: まぁ、当たるあたらんは置いといて、人気馬が−ここでは1番人気に限定しよう−馬群に沈む要因は、どこにあると思うかね?
けんすけ: まぁこんな所っすね。

今回の分析データの全てを参照する場合は、ここをクリックしてください。

 

■敗因

1.元々大した馬じゃなかった(過剰人気)
2.状態面に不安があった(休み明けなど)
3.不安材料が多すぎた(初距離、初トラック、初輸送…)
4.当日の状態変化(ひどい入れ込みなど)
5.展開が向かなかった

分析 Analyse
 


■元々大した馬じゃなかった
なぎさ: 考えてみれば、すごい言い訳だけど…(笑)。
けんすけ: いや、これが一番分かりやすいパターンだと思うぜ。例えば、上がり馬だから、鞍上が武豊だからってだけで人気になる事がある。
なぎさ: 下級条件なんかでは結構あるかも…。
けんすけ: 専門紙やスポーツ新聞の予想欄もメインレースには力を入れるが、案外7、8R位の下級条件戦は手を抜いている事も多いしな。
なぎさ: 実力と人気を評価する基準ってなんだろ? 難しいよね。
赤ペンおやじ: ふはははは。人気馬をまとめて切ってしまえば、そんな煩わしい事は関係ないぞい。
けんすけ: 自殺行為だぜ(笑)。一番簡単な方法はスピード指数やレーティングに代表される能力指数を利用する事だ。
なぎさ: はぁ走破時計を使う方法ね。確かにこれが一番簡単かも。
赤ペンおやじ: ふふふふ。競馬は時計じゃないぞい。
けんすけ: うっせーな! 時計が全てじゃないのは知ってるが、重要な目安である事には変わらねぇぜ。統計データで確認するぜ。
なぎさ: ねぇ、指数上位馬が以外に人気を裏切っているような気がするんだけど…。
馬成教授: 指数第1位が40%。指数第2位、第3位がそれぞれ14%。指数第1位で1番人気と言うのは時計理論を中心に考えているものにとって一番買いやすい組み合わせだと思うがのぉ。
けんすけ: うっ! た、確かにそうっすけど…。
なぎさ: 時計を…
赤ペンおやじ: 鵜呑みにしちゃあいかんちゅー事だぞいっ!
注)時計上位馬は人気になり易く、今回の様に1番人気のみを集めたサンプルの場合、サンプル数の多い指数上位馬が不利になります。決して指数上位馬が連対しにくい訳ではないのでご注意を。注意すべき人気馬とは、指数下位で人気になっている場合です。
 
補正タイム 出現数 比率
1位 20 40%
2位 7 14%
3位 7 14%
4位 4 8%
5位 4 8%
6位〜 6 12%
 
■状態面に不安があった
なぎさ: これって調教がよくなかったって事?
けんすけ: 当日のパドックの気配は全ての人間が分かるわけじゃないからな。
なぎさ: 調教時計の見方によって、ずいぶんと評価が分かれると思うんだけど。
けんすけ: 確かにな。一応ある調教の基準に基づいて評価したものと、前走に対しての上昇度を評価材料としてみたぜ。ところで教授。関東圏では関西圏の下級条件戦の調教データが手に入んないんすけど…。
馬成教授: 馬三郎があるじゃろう。
けんすけ: い、いや、買ってないっすよ。
なぎさ: つまりこういう事? 体調が万全でない=余り調教がよくないのに人気してたって事?
けんすけ: まっそうなるかな。
なぎさ: 体調がよくないのになんで人気になってるのよ。
けんすけ: それが新聞の調教欄の寸評の恐いとこだな。俺が見た所有力馬に対しては、かなり色目を使っているようにも思えるぜ。
なぎさ: じゃあこのABC評価って、新聞の評価とは異なるんだ。
けんすけ: そうだ。最もこの評価自体俺の主観が交じっているから、一概に正しいとは言えんがな。
 
不安材料 出現数 比率
初コース 30 60%
初距離 7 14%
初トラック 1 2%
テン乗り 17 34%
初斤量 2 4%
 

■不安材料が多すぎた
なぎさ: ねぇ、不安材料って何?
赤ペンおやじ: ふはははは。連に絡むかどうかの不安だぞい! そんな事も知らんのか?
けんすけ: 違う! ぜってぇ違う!
馬成教授: まぁ馬にとって前走やこれまでと大きく異なる条件の事を指すかのぉ。
なぎさ: ふ〜ん、って事は、例えば初めて走るコースとかですか?
馬成教授: 左様。あ〜宮田君。不安材料と思われるものをいくつかピックアップしてみなさい。
けんすけ: うっす。簡単に挙げると初コース、初距離、初トラック、テン乗り、初輸送などがあるぜ。この中でも負担が大きいと思われるのはやはり…。
赤ペンおやじ: 初出走だぞい! やっぱり初めてのレースは誰でも緊張するぞい!
けんすけ: 当たり前だ!
なぎさ: 初めてが不安なのは分かるけど、こういうケースは違うのかなぁ。例えばコース実績が0-0-0-12とか。
けんすけ: クラスにもよるだろうがやはりマイナスと考えていいんじゃねぇか。
馬成教授: 例えば500万クラスではほとんどが1勝馬である事が前提の様なもんじゃろ? すると勝っている方が珍しいとも言えるのぉ。
馬成教授: ほほぉ〜、面白いデータが出たのぉ。
けんすけ: 俺も意外だったんすけど、馬にとって一番の不安材料はコース実績みたいっす。この場合のコース実績とは単に同じ競馬場を走った事があるかではなく、同一距離も指します。つまり、同じ競馬場の同じ距離、同じトラックって事っすね。
なぎさ: ここまで明確な数値が出てるなら、コース実績は必須事項と言えるんじゃない?
けんすけ: まぁな。テン乗りも比較的高い数値が出ているが、これは馬の癖がつかめていない鞍上のポカって事だろうな。
馬成教授: いずれにせよ、追加調査しても面白い題材である事にかわらないのぉ。
 
不安材料 出現数 比率
初コース 30 60%
初距離 7 14%
初トラック 1 2%
テン乗り 17 34%
初斤量 2 4%
 
■当日の状態変化
けんすけ: これはちょっと検証しづらいっすよ、教授。
なぎさ: これってやっぱりパドックでの善し悪し?
けんすけ: そうだ。
なぎさ: じゃあパドックを見てなきゃ駄目って事よね?
馬成教授: 左様じゃ。当然TVや場外でのモニターを通した映像では馬の状態が判断しづらい。おまけにこれも個人の主観やそれぞれの馬の個性によって大きく見方が変わるからのぉ。
赤ペンおやじ: こんなもん、しっぽ振ってる馬とつる首の馬がいいにきまっとるぞい!
馬成教授: かつてはつる首の馬がよく走ると言われておったが、今では結構おるでな。特には関係なかろう。
けんすけ: 教授、俺パドックって苦手なんすよ。あえて注意する点は何すかね。
馬成教授: さすがに統計的なデータを出すのが難しいだけに、何とも言えんが一般的に次の様な状態の馬はベストの状態といえんのぉ。
 
・いつもよりも大人しい=元気が無い
・発汗が他の馬に比べて特に目立つ
・ひどく暴れている=入れ込んでいる
     
■展開が向かなかった
なぎさ: これも抽象的な要素の様な気がしますが…(笑)。
けんすけ: 何をもって展開が向かなかったと言うかだな。
赤ペンおやじ: ふはははは。展開を見極める奥義があるぞい! 逃げ馬は逃げる。先行馬は前に行く…。
けんすけ: …まぁおやじの言う事は置いといて。
馬成教授: いや、案外それは合っておるかな。何故なら、逃げなければ持ち味が発揮できない馬と言うのは意外に多いが、その馬の出走するレースが逃げ先行馬が多数出走しており、逃げられなかったとしたらどうじゃ? あるいは逃げられたとしてもかなり無理をしなければ鼻を切れなかった場合はどうじゃ?
けんすけ: なるほど。教授の言う通りっすね。
なぎさ: でもそれを見極めるのはどうするんですか?
馬成教授: やはり、出走馬の脚質の構成とコース形状、騎手の持ち味などを考慮して見極める必要があるかのぉ。
なぎさ: これも難しそうですね。
けんすけ: 少なくとも赤ペンおやじには無理か。
赤ペンおやじ: 何ぃ〜!
   

実例:1999/10/10 京都大賞典の1番人気 スペシャルウィークは何故負けたのか?





○元々大した馬じゃなかった。(過剰人気)
なぎさ: こんな事書いたら起こられちゃいますよ(笑)。
けんすけ: グラスワンダーに宝塚記念でやられたとはいえ、実力は内国産1位だ。おまけにこの世代のレベルは高いし、実際大した馬だぜ、スペシャルウィークは。
 
○状態面に不安があった(休み明けとか)
なぎさ: 休み明けだよね。宝塚記念以来の。
けんすけ: この時期、1流馬は夏の間休養に当てるのが普通だぜ。常識的なローテーションだろ?
なぎさ: でも6着は負け過ぎよね?
けんすけ: これがこの時期の競馬の難しい所だ。スペシャルウィークはこの後、天皇賞→JC→有馬記念と駒を進めるらしいから、ピークであるJCの前に仕上げてはまずいと言う事か。
なぎさ: 調教はどうだったの?
 
○不安材料が多すぎた(初距離、初トラック、初輸送…)
なぎさ: これだけキャリアが豊富な馬に不安材料があったなんて思えないけど…。
けんすけ: 当然だ! …と言いたいとこだが、実はあるぜ。この馬コース実績が無いんだ。もちろん天皇賞馬だから京都の出走経験はあるが、レースと同じ京都2000mの経験が無かった。
なぎさ: 負けた最大の原因は状態じゃないの?
けんすけ: 状態もあるだろうが、残念ながら何らかの原因で、コース実績の法則の統計データを増やしたのは確かだぜ。
 
○当日の状態変化(ひどい入れ込みなど)
けんすけ: いつもと変わらん。
 
○展開が向かなかった
けんすけ: 展開的には春の天皇賞と同じパターンだったが。
なぎさ: 何が違うの?
けんすけ: 直線に向いてからいつもの様な伸びが無かった。
なぎさ: なんで?
けんすけ: う〜ん、4コーナーでちょっと馬が行きたがってたな。
赤ペンおやじ: あそこで先頭に立てばよかったものを!
けんすけ: 仕方ねぇんじゃねぇの。終いが切れるメジロブライトがいる訳だし、武としては直線まで足を溜めたかったと思うぜ。
けんすけ: このレースでの敗因は久久に加え、やはり仕上がり途上と言う事か。特に目標としているレースがある場合は尚の事だな。
馬成教授: 1998年のエリザベス女王杯でエアグルーヴも同じ目に会っておるのぉ。エアグルーヴもピークをJCに合わせての仕上げだったから、エリザベス女王杯を取りこぼしておる。

■馬成教授のまとめ
最後にわしなりの見解を加えてまとめとしよう。1番人気が崩れる時、これまで挙げてきたような要因が考えられる。だが、これらを全てチェックするのはかなり難しい事じゃて。そこで、最低限の目安を設けた。事前にチェックする項目として1〜3番まではよいな。これらは新聞をよく読めば容易に判断がつくと思う事じゃ。特にテン乗りとコース実績は必ずチェックしておかなければならない項目じゃな。そこで、これらに加えて当日の単勝オッズを見るとよいじゃろう。信頼のおけるオッズの目安は2.2倍未満と言うとこかのぉ。 いずれにせよ、1番人気だから無条件で消すのではなく、きっちりとその実力や仕上がり具合を確認しておく必要があるのぉ。

HomeMenuFILE 02